伝統製法を守るプロシュット(Prosciutto)は長期熟成の自然食品

イタリアの街中には惣菜やチーズ、ハムなどの食材店があちこちにあり、その天井に熟成されたProsciuttoがたくさん吊るされている光景を目にします。このローマ帝国時代から続くという伝統的なハム、Prosciutto(プロシュット)は、もともとは無添加の保存食であることをご存知ですか?

Prosciutto(プロシュット)は、「じっくり乾かしたもの」を意味する言葉。製造方法は、まさに、その名が意味する通りで、豚の腿肉に天然塩をすり込み、塩漬け。1年から2年間という長期間にわたり吊るされて乾燥、熟成させます。一般的に燻煙(スモーク)はしません。長期間の間乾燥、熟成させることによって、まろやかな天然の旨みが増し、繊細な風味が醸し出されます。原材料は豚のモモ肉に天然塩のみで、とてもシンプルです。

1996年に世界的に有名なイタリアのパルマ産生ハム、パルマハムの日本輸入が解禁され、それ以降様々なイタリア産食肉加工品が、日本でも気軽に購入できるようになりました。その頃から、日本のハムとは全く違う、噛むほどにに肉の旨みが広がるその味わい、美味しさに気づいた方も少なくないのではないと思います。

7日間以上塩漬すると熟成になる?

日本のハムはこのプロシュットとは製造方法が全く異なります。生ハムは「非加熱食肉製品」であり、一般的なロースハムやボンレスハムなどのハム類は「加熱食肉製品」。イタリアの生ハムは加熱せずに乾燥して作られるのに対し、日本の一般的にハムといわれるものは、原材料の肉をケーシング等で包装した後、くん煙、湯煮するなど加熱して作られます。(くん煙しないで湯煮するなど、様々な製造方法がある)

また、「熟成」するという言葉に対する認識にも違いがあるようです。 パッケージなどに「熟成」をうたって販売されているハムがありますが、「熟成ハム類の日本農林規格」においては、「熟成」の定義は、原料肉を一定期間塩漬することにより、原料肉中の色素を固定し、特有の風味を十分醸成させること、としています。つまり「熟成」は「塩漬け」をする期間を意味しているようです。熟成ハム類の既定では7日間以上塩漬することとしています。

1年から2年という長期の間、自然に乾燥熟成させて作られるProsciutto(プロシュット)に比べ、1週間(以上)塩漬けされてつくられる日本の熟成ハム。

そもそも製造方法が異なるとはいえ、一般的に私たちが「熟成」と聞いて想像する工程は、プロシュットの考え方に近いような気がするのですが、どうでしょうか?

どちらが良いとか悪いとか、正しいとか正しくないとかではなく、日本のハムでいう「熟成」、というコトバにちょっと違和感を感じてしまうのは私だけでしょうか?

この記事を書いた人

オーガニックプレス編集長 さとうあき

インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。

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