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搾りたての美味しさ?

たくさんある牛乳の中から一つの牛乳を、どのような基準で選びますか? ローファットやノンファットのもの?それとも、成分無調整のもの?成分無調整はナチュラルだと思うから?価格が安いという理由だけで選んでいないでしょうか?キャッチコピーに惹かれて、選んでいないですか?搾りたての美味しさをお届けします、、などという言葉はよく目にしたり耳にしたりすることがあると思いますが、搾乳したミルク(生乳)をそのまま瓶詰することはなく、基本的に牛乳は加熱殺菌されてから流通するのが原則となっています。*特別牛乳は別。

加熱される工程において、本来の生乳が持つ風味や美味しさが損なわれることが多い為、なかなか本当の搾りたての風味を感じるのは難しいことなのです。

牛乳は、食品衛生法にもとづく「乳および乳製品の成分規格等に関する省令」(乳等省令)で、「保持式により摂氏63度で30分間加熱するか、又はこれと同等以上の殺菌効果を有する方法で加熱殺菌すること」と定められています。「摂氏63度で30分間加熱・・・と同等以上の殺菌方法」なのですが、メーカーや商品によりその加熱温度と時間の組み合わせは様々。一般的に販売されている牛乳の多くは「120~145℃の高温で、2~3秒間という短時間で熱処理殺菌されたものです。このような超高温殺菌したものは生産効率は良いですが、細菌や微生物を減少あるいは死滅させるとともに、自然な風味を損ない、タンパク質の熱変性を引き起こすと言われています。

パスチャライズド牛乳とノンホモジナイズド牛乳

「パスチャライズ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?「パスチャライズ」とは、牛乳の熱処理方法を表す言葉で、生乳をより自然な形(生乳に近いカタチで)で、と追求した熱処理法です。最近では一般のスーパーなどでも扱っているお店も多く嬉しい限り。自然食品店で販売されている牛乳は、低い温度でゆっくりと加熱している「低温殺菌牛乳」などパスチャライズド牛乳が主流です。一般に多く流通している牛乳と比べて断然美味しい!というのは言うまでもありません。

<パスチャライズ牛乳>
■低温長時間殺菌法  Low Temperature Long Time(LTLT)  63~65℃ 30分間
■高温短時間殺菌法 High Temperature Short Time(HTST)  72~75℃ 15秒間

<一般に多く流通している牛乳>
■超高温短時間殺菌法  Ultra High Temperature (UHT)   120~130℃ 2~3秒間
■超高温短時間滅菌法   (LL)
*常温90日保存可能なロングライフ(Long Life)牛乳 135℃~150℃ 1~4秒間

一般に流通している牛乳のほとんどは、「ホモジナイズ」と言って、牛乳に含まれる脂肪球を圧力をかけて均質化し、細かくしている。牛乳(搾りたての生乳)は、本来静置しておくと乳脂肪分であるクリームが浮くという性質が見られますが、滅菌の前にホモジナイズド処理をすることによって、機械の詰まりを防ぎ、流通品質を保持するとともに、クリームラインや食感の変化を防ぐのです。このような均質化処理(ホモジナイズド)をしていない牛乳のことを、「ノンホモジナイズド牛乳」と言います。

ノンホモ牛乳は、牛乳の中に含まれる脂肪分をホモジナイズド(均質化)していないので、脂肪分に偏りがあるが、味わいも、その性質も、とても自然な形に近い牛乳と言えます。上部に浮いたクリームごと良く振ってから飲むほか、クリーム部分をすくって生クリームとしていただき、残ったミルクをローファットとしていただくといった楽しみ方もできます。

初めてノンホモ牛乳を購入したお客様が、開封後、脂肪が分離していることに驚き、お店にクレームが入ってしまった、、、というのは、実はオーガニックスーパーではよくあるエピソードです。

有機JAS認証オーガニック牛乳

日本でも2005年の10月に国の有機畜産物の日本農林規格基準が制定され、その後2006年に初めて「有機牛乳」が誕生。少々お値段は高めではありますが、その後、徐々に製造メーカーも増え、広がりをみせています。

有機牛乳(オーガニック牛乳)とは、飼料や飼育、製品加工に至る全ての工程において有機JAS規格に基づく厳しい検査をクリアし、認定を受けたもの。有機畜産物の生産の原則に基づき、環境にも家畜にも優しい方法で育てられた、乳牛からとれるミルク、ということが一番のポイントです。

一般的に私たちが思い浮かべる牧場の風景は、草原の中で牛が草を食べたり、のんびり寝たり歩いている姿なので、酪農で牛を放牧させるのは当たり前・・・と思われるかもしれませんが、一般的には、効率的に搾乳するために、自由に身動きできないような狭い囲いに入れられ、配合飼料をあたえられ、まるで牛乳製造マシーンのように育てられ、搾乳されてる事が多いのだそうです。現代酪農の現状を知り、動物愛護の観点からヴィーガン(完全菜食主義者)となる方もいるそうですが、それはまた別の機会に。

美味しい牛乳を見分けるにはどこを見るか?

まずはパッケージ記載の表示欄「殺菌」の、温度と時間をチェックしましょう。高温より低温を(100℃以下)、秒より分と表示されているものをお勧めします。美味しいキーワードは、「パスチャライズ」「ノンホモジナイズ」「低温殺菌」「オーガニック」です。

オーガニック牛乳は、環境にも優しい有機飼料を与え、野外での放牧を行い、のびのびとストレスを感じさせない環境で育てられた乳牛からとれるお乳。美味しいエサを食べて健康的に育った牛のお乳は、一味違うに違いない。また、飼育管理だけでなく、製造加工ラインにおいても、厳しく管理された安心・安全な牛乳といえます。ただし、「有機牛乳」でも「パスチャライズ牛乳」、「低温殺菌牛乳」であるとは限らないのでご注意を。

殺菌方法を重視するか?乳牛に与える食べ物や飼育方法を重視するか? オーガニックか、低温殺菌か、ノンホモか?最終的には、実際に味わってみて美味しいと感じるものを選べば良いのですが、それぞれの牛乳の違い、基本をきちんと理解したうえで、自分好みの美味しい牛乳を見つけて欲しいなと思います。

この記事を書いた人

オーガニックプレス編集長 さとうあき

インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。