海外の食品展示会に行くと、日本出展者ブースで特に注目を浴びているのが「抹茶」。ここ数年の海外での抹茶ブームの勢いはすごく、美味しくて健康的な飲み物としてはもちろん、スーパーフード的なイメージでとらえている人も多いようです。展示会でも「Uji Matcha(宇治抹茶)」を指定して求める方が多くいたりなど、認知度は非常に高いですね。その一方で、いわゆる緑茶(Green Tea)を粉末にしたものと、抹茶(Matcha)の違いがよくわからない・・という声もあります。抹茶と緑茶パウダーは別物という認識のある日本人でも、正確にその違いを知っている人は、もしかしたらそう多くないかもしれないですね。
碾茶(てん茶)を石臼などでひき、細かい粉末にしたものが抹茶。「碾茶(てん茶)」は聞きなれない言葉ですが、あの甘い「甜茶」のことではなく、抹茶の原料となるものです。
一般的な「緑茶」は日光を当てて栽培した茶葉を使用します。緑茶の中でも「玉露(ぎょくろ)」と言われるものは、茶摘み前のある一定の期間、日光を遮る被覆を用いて茶葉に日光が当たらないようにした茶葉を使用します。この玉露(ぎょくろ)と同様、日光を遮って栽培した茶葉を収穫し、蒸してから(揉まずに)乾燥させたものを「碾茶(てんちゃ)」と呼び、これを茶臼でひいて微粉末状にしたものが「抹茶(まっちゃ)」となるのです。
玉露や抹茶のように、栽培において一定の期間直射日光を遮った茶葉は、旨み成分のテアニンやアミノ酸が増え、苦味成分のカテキンの生成が抑えられるといいます。よって、一般的な日光を浴びて育った茶葉(緑茶)をそのまま粉末にしたものとは、まろやかさ、味わいも異なるものとなります。緑茶(Green Tea)を粉末にしたものと、抹茶(Matcha)とでは、茶葉の育て方も、製造工程も、味わいも、別物ですよ。
お茶などの加工食品はJAS法の「加工食品品質表示基準」に基づき、以下、表示が義務付けられています。もちろん、有機JASの規格を満たし、有機JASマークを取得したものだけが「オーガニック」「有機」の表示が可能になります。
■表示事項の例
1.名称 (抹茶、煎茶、玄米茶 etc)
※認証取得したものは、有機抹茶etc
2.原材料名 (緑茶 etc)
※緑茶(国産)など原産地をカッコで並記も可
※認証取得したものは、有機緑茶と記載可
3.原料原産地名
※国産のものは「国産」と記載。都道府県、市町村、一般に知られた地名も記載可。輸入品の場合は「原産国名」を記載
4.内容量
5.賞味期限
6.保存方法
7.製造者
2の原材料欄では、緑茶の粉末も、抹茶も『緑茶』となるため、本物の抹茶を選ぶには1の名称は「抹茶」となっているかをチェック。日本人なら一目瞭然でも、海外の方には日本語表記だけだとわかりにくいかもしれません。最近ではアレンジを加えた粉末抹茶飲料や、製菓用など、甘味料や乳製品、デキストリンなどが入っているものも多く販売されています。抹茶ブームにより低品質、低価格の「抹茶」、アレンジした製品、「緑茶パウダー」と「抹茶」の違いがわかりにくいものなどが増えることで、日本の本物の抹茶の信頼が揺らぎかねない事態になることが心配でなりません。
この記事を書いた人
オーガニックプレス編集長 さとうあき
インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。