Project Description

バンコクは日中36度まで上がる。体を動かすなら涼しいうちに限るということもあり、早朝の公園は人でいっぱいだ。黙々ランニングしている人も多いが、グループで集まって運動している人たちもかなりいる。木陰で中国舞踊のような型を繰りかえす集団がいるかと思えば、池のほとりでは瞑想状態のヨガ集団、広場では大音響に合わせてステップを踏むダンス系、サッカーチームかと思えばタイの昔からのスポーツ蹴鞠チームの朝トレといった具合で、さながら運動会のような騒ぎである。

帰り際、公園の隅に立ち並ぶ豆乳家の屋台で豆乳を買った。どこからあんな熱い豆乳鍋が出てくるのかいつも見のがしてしまうが、あっという間に人だかりができ売り切れてしまう。その場で飲む人もいればビニール袋に入れて持ち帰る人もいる。沸かした豆乳はタイの伝統的な朝食で「ナムトーフー」という。豆乳には自分で具を選んで混ぜてもらうことができ、黒ごまやコーン、はと麦、 銀杏など7~8種類はある。

顔馴染みになると遠くで姿を見かけたとたんに私がいつも注文する豆乳を調合しだす。時間の無い朝のうれしいサービスには違いないが、買わずに帰りたい日は姿を見られないように苦労する。「いらない」といえばいいようなものだが、今日も買うと信じきっている相手に断るのはなんだ かすごく勇気がいる。

ある日、買ってきた豆乳を飲み忘れた。本日飲みきりが原則の無添加の公園豆乳である。なんとか今日中に使ってしまわなくてはならない。

無糖だったので生湯葉を作ることにした。こういう時こそ多少不出来でも自分で作ろうという気になったのだが、煮詰めながらの湯葉すくいは時間がかかった。とうとう夕食に間にあわず、途中であきらめ、残りはそのまま蕎麦にかけた。濃くなった豆乳を器に入れ、キリッと氷でしめた蕎麦に努力の割りにちょっとしか出来なかった湯葉をのせた。時間切れのため、味つけは「好きなだけ醤油かけてね」という安易なものになった。

ところが食べてみると豆乳と醬油が混ざってなんともいえないコクがあり、そこに冷えた蕎麦がからむと、豆乳臭さも蕎麦臭さも丸くおさまる逸品だった。豆乳は豆の絞り汁だからダシとしての旨味にもなるわけかと納得し、以来、わが家の手間いらずの麺ダレとなっている。

豆乳ぶっかけ蕎麦 (1人分)

  • 豆乳      2カップ弱
  • 醤油      適当
  • 薬味      大葉、ネギ、(わさび)、のり
  • 蕎麦乾麺     100g 茹でる
  • あれば湯葉   適当
  1. 豆乳を吹きこぼれないよう1~2割煮詰めて冷蔵庫に入れておく。
    (煮詰めている時に表面に膜が出来たら箸ですくい湯葉を取る。暇な時はどうぞ)
  2. 1を器に入れ、蕎麦、湯葉、薬味をのせる。
  3. 各自、テーブルで醤油をかける。

*湯葉の変わりに豆腐をのせるのもあり。

木幡恵プロフィール

20代でマクロビオティックに出合い、30代で雑穀に出合い、50代でタイに出会ってしまった料理クリエイター。ストイックだけど大胆、本気だけど本音であることがたいせつだと思っている。料理活動の場はバンコク。ベジを基本にアジアの調理法を盛り込んだ料理クラス「gaiatable」を主宰。

タイ語のマガジンHEALTH &CUISINEと日本語のタイ情報誌のDACOにレシピを連載中。
自身が企画した商品をヤムヤムから販売している。

■つぶつぶクッキング
■無発酵の雑穀パン
■雑穀つぶつぶクッキング
■おいしいマクロビィオテック (タイ語)
■タイの料理雑誌HEALTH&CUISINE(タイ語)
■タイのマガジンDACO 料理エッセイ「大地のめぐみ」(日本語)

★Gaia Table 南国食日記
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