病院は「病気を治しに行くところだ」と思っていた。だがタイでは違った。ちょっとお茶しに病院というのもありなのだ。大胆にも病院内のカフェは、扉も仕切りもなく、受付や会計窓口の隣に店を出している。

飲み物だけではなくその場でサンドイッチも調理しているのだ。ゴミの管理は大丈夫なのだろうか、コップから感染なんてことはないのだろうかと、当初はこわごわコーヒを飲んだ。だが、人間、慣れはおそろしい。今では静かな病院カフェの大フアンになった。休みの日には学生が集まって勉強する姿もよく見かける。

タイでは病院は「寺」みたいな位置づけなのかもしれない。敷地が境内ということであれば、ゲートの守衛が誰が出入りしようが気にとめないわけである。私は歩いて12分ほどかかる駅までの道に、この境内を利用している。裏口のゲートから敷地に入り、毎日オープンしている露店マーケットの手前から病院ビル内に入る。ここまで来たときには、化粧は汗で溶け出しているのが常だが、冷房の効いた館内を歩くうちに、なんとかおさまり、無事、駅に到着することができる。

敷地内の露店マーケットにもよく出かける。本館と別館の間で朝7時から昼2時まで、患者や病院関係者から一般人まで多くの人を集めにぎわっている。普通の市場と変わらず、洋服から化粧品、靴、植木、寝具、陶器と日用品が並んでいるが、足が痛くならない靴や安眠まくらなど健康系のモノも見かける。

食べ物もある。惣菜屋からお菓子までタイの日常食ばかりだ。今日はオーガニック野菜を売る店も出ていた。タイでも美味しきゃいいんだという人は減り、健康を意識した食に人気が関心が移っている。たとえば、この串焼きの団子は、魚のすり身を通常は揚げた「トートマン・プラー」というものなのだが、ここでは焼いている。焼くことによって油分を落としているわけで、今日一番の人気店だった。

もうひとつ、このマーケットには斬新なシステムがある。毎日、店が入れ替わるのだ。もう一度買いたと願う、甘さ控えめのタイ菓子店には、あれから1ヶ月も通っているが、まだ再会出来ずにいる。

タイの露店販売は、毎日同じ時間に同じ店が出るか、ある期間中、同じ店が出ているのが普通である。毎日店が入れ替わるマーケットといえば、田舎を巡回する移動マーケットぐらいなものだから、ここは異色のシステムだ。

一期一会の魅力は半端ではない。気にいった店に出会ったら、追っかけになるしかない。おばさん店主はショップカードをくれ、若者とはフェイスブックやラインでピッと繋がる。露店は作り手の思いを直にお客さんに伝えることができるチャンスの場だ。「これいいね」という気持ちを共有する場は、お客側とてうれしいチャンスなのである。

はたして日本の社会の中で、病院とマーケットが共存することが可能なのか?集まる人にどこまで寛大になれるのか?長くタイに住んでいる私の頭ではわからない。ただオーガニックやナチュラル系の製品販売はその趣旨からも、病院をつなぐネットワークでも流通して欲しいし、一期一会システムで店を巡回できたらと思う。

患者にも通行人にも日替わりマーケットは楽しい上に便利だ。患者と元気な人がともに買い物を楽しむ場は、なんだかそれぞれを元気にしている。タイにいらしたらアッと驚くタイの大胆さと合理性を体験しに、病院も是非見学してみて欲しいと思う。

グァバのヤム

  • グアバまたはりんご 1こ
  • ミント       2〜3枝
  • マナオ汁(レモン汁)大さじ2
  • 王国のナンプラー  大さじ1
  • (ココナッツシュガー 小さじ1/2)
  • にんにく      1こ
  1. グァバを塩水で洗い一口大に切る
  2. ミントは茎から葉をはずす
  3. すり鉢でニンニクを潰し液体類を加える
  4. 3に果物とハーブを入れさっと搗き混ぜる

タイはグァバが美味しい季節なのでグアバで作りましたが、日本ではりんごでお試しください。桃でも梨でも出来ます。

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二年熟成発酵『王国のナンプラー』

「王国のナンプラー」は砂糖を一切使っていません。甘味はご自分のお好みに応じてお使いいただけます。砂糖を使わずに丸みのある香りと濃くを生み出すには、長いの時間をかけた熟成発酵が必要で、「王国のナンプラー」は二年の熟成発酵期間から生まれた本物の旨みです。魚臭はほどよく抑えられ、深い濃くがタイ料理の伝統の味を作り出します。材料となる魚はカタクチイワシのみを丸ごとを使用。バランスのとれた旨味の一滴を作るため、材料は毎回厳しく吟味しています。添加剤や防腐剤は一切使っていません。

原料:カタクチイワシ・塩
内容量:200ml
原産国:タイ
小売価格:600円(税抜)

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木幡恵プロフィール

20代でマクロビオティックに出合い、30代で雑穀に出合い、50代でタイに出会ってしまった料理クリエイター。ストイックだけど大胆、本気だけど本音であることがたいせつだと思っている。料理活動の場はバンコク。ベジを基本にアジアの調理法を盛り込んだ料理クラス「gaiatable」を主宰。

タイ語のマガジンHEALTH &CUISINEと日本語のタイ情報誌のDACOにレシピを連載中。
自身が企画した商品をヤムヤムから販売している。

■つぶつぶクッキング
■無発酵の雑穀パン
■雑穀つぶつぶクッキング
■おいしいマクロビィオテック (タイ語)
■タイの料理雑誌HEALTH&CUISINE(タイ語)
■タイのマガジンDACO 料理エッセイ「大地のめぐみ」(日本語)

★Gaia Table 南国食日記
http://gaiatable.com/diary/

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