桜の写真がメールで送られてくる。この季節はいちばん日本が恋しい。タイは窓辺の机に向かっているだけで小麦色に日焼けするほど、来る日も来る日も太陽が照りつける。
こうなると食欲も徐々に落ちて、固形物は食べたくなくなる。いかに甘いもの好きの私でもケーキやクッキーは気温が25度を下まわらないと食べる気がしない。
街には冷え冷えのスムージーが店ごとに趣向を凝らしてニューバージョンを売り出している。チーズケーキとアイスクリームを放り込んで回したかのような出来ばえは、ケーキを水分化したとしか思えない。だが一時期はそれがウケ、大流行したが、だれもが間違いなく太るということにも気がついた。そのせいか最近は豪華なスムージー離れが進んでいる。
とは言え、甘いものが欲しい気持ちが消えたわけではなく、そうそうと思い出し、結局、昔ながらのタイスイーツの屋台が繁盛している。
タイ人なら誰もが幼い日に食べた「カノムクロック」
黒ゴマ団子、甘い生姜汁入り
タイの菓子は、小麦がとれないため、必然的に米で作られてきたわけだが、奇しくも、今、注目の完璧なグルテンフリーの菓子たちになってしまった感がある。
デザート系は炊いた穀物をそのまま使うことが多い。日本では「おはぎ」しか思い浮かばないが、タイではつぶつぶしたデザートはごく普通。黒米、あわ、ハトムギのデザートは定番中の定番なのである。柔らかく炊いたり、タロイモを入れたり、タピオカでトロミがつけたりと、喉越しが良く、穀物過多でお腹がいっぱいにならないよう工夫されている。
たいがいはここにココナッツミルクをかけて食べる。ところが、甘いだろうと想像するココナッツミルクが味噌汁ほども塩っぱいのである。穀物の方にココナッツシュガーでほのかな甘みが付いているので、一緒に口に運ぶと、スッキリした塩風味のデザートで、思ったより軽い。タイスイーツには日本人が想像しない穀物の使い方がまだまだある。
それにご覧あれ、デザートの上にのせるトッピングたちのなんとユニークな!コーン、かぼちゃ、レンコン、銀杏、くわいは序の口。ゆで卵、塩卵も入れる。あんまりなんでも入れるので、烏賊も入れるのかと思ったら、写真前方の白い物体はココナッツの身のこそげ取ったものだった。でもまあ、烏賊でもいいような気がしてくるほど斬新な発想である。
さて、ここで、皆さんも想像してみてほしい。お粥にのせるあの塩っぱい塩卵がココナッツミルクに入ると、どんな味になるでしょうか?(※答えは最後)
タイ人の友達エイもスムージー派を卒業して、タイデザートに目を向け出した。同じ年頃の女性たちと「ブァローイ 」というデザートについて、ああだーこうだー話している。話を聞くとブァローイは昔からある白玉のごくごく一般的なデザートだと判明した。だが微妙な違いがあった。日本では粉を捏ねて団子状にした白玉をお湯で茹でるが、タイはココナッツミルクで茹でるのである。
「えっ、ココナッツミルクで茹でるの?」
「チャーイ (はい)。ココナッツミルクにココナッツシュガーと香り付けのバンダナスリーフを入れて、そこに白玉を入れて茹でるのよ」
さっきまで茹で汁だったココナッツミルクごと椀によそって食べると、ミルクに微妙にとろみが増しクリーミーになっている。西洋優勢のお菓子の世界も、タイの穀物とココナッツミルクで逆転する日がきそうな気がしてきた。
白玉のココナッツミルク煮
(ブァローイ) 2人分
調理時間 10~15分
- 白玉粉 50g
- 水 40g
- ココナッツミルク 200cc
- ココナッツシュガー スープスプーン1
- 塩 ややしょっぱい程度
- ドライロンガン 6こ
- ココナッツミルクにココナッツシュガーと塩を入れて煮る
- 白玉粉に水を入れて練り白玉を作る
- 煮立った1の中に2を入れて1分ほど煮る
- ドライロンガンをいれ、器にいれる
*ドライロンガンの代わりに南国フルーツでもよい
※正解
塩キャラメルカスタード風味になります
木幡恵プロフィール
20代でマクロビオティックに出合い、30代で雑穀に出合い、50代でタイに出会ってしまった料理クリエイター。ストイックだけど大胆、本気だけど本音であることがたいせつだと思っている。料理活動の場はバンコク。ベジを基本にアジアの調理法を盛り込んだ料理クラス「gaiatable」を主宰。
タイ語のマガジンHEALTH &CUISINEと日本語のタイ情報誌のDACOにレシピを連載中。
自身が企画した商品をヤムヤムから販売している。
■つぶつぶクッキング
■無発酵の雑穀パン
■雑穀つぶつぶクッキング
■おいしいマクロビィオテック (タイ語)
■タイの料理雑誌HEALTH&CUISINE(タイ語)
■タイのマガジンDACO 料理エッセイ「大地のめぐみ」(日本語)
★Gaia Table 南国食日記
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