Project Description

出汁をとるとき、すりおろした果物や野菜の汁を搾るとき、蒸しものを蒸すときなどに使う、さらし木綿(さらし布)。台ふきんとしてや、食器拭き用にと、なんにでも使える「さらし」は、昔から日本の台所に欠かせない存在でしたが、いざ、スーパーなどのキッチン用品売り場で購入しようとしても売っていないんですよね。ふと、「そういえば、さらし布ってどこで買えるんだろう?」という疑問が頭に浮かんできました。

今でも「さらし」を使っている実家の母に尋ねてみると、和装着物店(反物屋)さんで購入しているとのこと。1反ぶんを購入して、使う用途によって裁ちばさみで切って使っているとのことでした。

近所に反物屋さんなどなく、さらし布を買うためにお店を探し回るのも大変ですが、今はネット通販で何でも入手できる時代。「さらし布」と検索してみると、料理用としてというよりは、主に出産入院準備の「腹帯」用としているものがヒットします。「さらし布」は台所用としてはもちろん、腹帯や赤ちゃんのおむつに使ったりと、とにかく昔はどの家庭でも必ずあるといっていいものだったのですね。

今では一般に「ふきん」として販売されているものは、用途に合わせて伸縮性のあるものや吸水性に優れたもの、抗菌性に優れたものなど付加価値をつけたものが多いですね。当然、布端がほつれないようきちんとかがられているし、素材も木綿ではなくレーヨンだったり、あるいは使い捨ての紙だったりします。「さらし布」をふきん用としてそのまま販売されているのは、スーパーで見たことがありません。昔は必要な分さらしを裁断し、何度も洗って繰り返し使用。清潔に保つために煮洗いしたり、クタクタになったらお掃除用におろして最後まで無駄にすることなく使っていたのに。どこの家庭にもあって、様々な用途に活用されていたさらし布は、万能でとてもエコなもの。それなのに、いつの間にか「さらし布」は身近な存在ではなくなってしまいました。それこそ、昔は古くなったタオルや布などを縫って造ったお掃除用の雑巾などまで、今ではすっかり”購入するもの”になってしまったようです。

木綿1反はおよそ12m~13m。メーカーによって異なりますが、価格は1000円前後くらい。今は10m単位で販売されているものも多いようですが、正方形になるように裁断して30枚分くらいはとることができます。何度も繰り返し使えて1枚当たり数十円というコストパフォーマンスの良さ。これがオーガニックコットンとなると一気に価格が高くなってしまいますが・・・。

使い捨て製品が身の回りに多い今、あらためて環境への影響を意識し、使い捨てにしない暮らしをしていきたいもの。最近は家庭でいちから出汁をとることも少なくなり、お味噌にあらかじめ出汁が入っているものだったり、便利な顆粒タイプのものや紙パック入りの出汁などを使う事が多くなりました。そのため、鰹節やいりこなどの「出汁を布で漉す」という作業が発生しません。

どこの家庭でも鰹節を削って出汁をとっていた時代から、便利なインスタントの時代へ・・・。そんな時代だからこそ、一度「出汁をとる」ことからはじめてみませんか?2番出汁まで取り切っただしがらは捨てずに料理に使用。出汁を漉すために使ったさらしは洗って繰り返し使い、そのうち台ふきんや掃除用へと活用していく・・・。そんなちょっとした日常から「さらし」のある暮らし、その時代の日本の台所がいかにエコであったかを実感すると思います。

佐藤アキ (Aki Sato)