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ニュールンブルグで先日開催されたBIOFACH2016に行ってきた。ドイツではオーガニックは定着し、一般的な大きなスーパーでもBIO製品を見かける。値段は普通の2割高から倍するものもあるが、特別にBIOコーナーがあるわけではなく一般品と一緒に棚に並んでいた。

そして市民権を得たオーガニックの次は「ヴィーガン(VEGAN)」が大きなウエーブとして若い世代を中心に支持されはじめている。テレビなどマスコミも盛んに取り上げているようで、BIOFACHでもヴィーガンを視野に入れた出展が多かった。ディユッセルドルフなどの大都市でもヴィーガンレストランは確実に増えているそうだ。

ヴィーガン(VEGAN)とは乳製品から肉、魚まで動物性食品をいっさい食べない食スタイルのことだ。なんで畜産の国ドイツでヴィーガンなのだろうか? それは動物の生態を無視し食材としての価値だけで育て屠殺することへの嫌悪感や、それらで作った食品を大量に押し付けてくる今の社会に対する抗議でもあるように思えた。

オーガニックは大地や生命の循環から成り立つものだ。大量消費に見合う肉の生産や、卵の生産だけを追えば、動物を無視する結果は当然である。ドイツでもつい半世紀前まで肉は週に一度だったという。日本でも昭和の頃は刺身は極めてハレの食事だった。いつのまにか、ご馳走を毎日食べる暮らしが世界中に蔓延したが、オーガニックをきっかけにヴィーガンという形で問い直されている。

BIOの会場に話しにもどそう。今年も食品から化粧品までたくさんの製品が紹介されていた。部門ごとに注目される新商品があるのだろうが、独断と偏見で私がいいなと思ったオーガニックでありヴィーガンでもある製品を紹介しようと思う。

数年前から噂には聞いていたが試すチャンスがないままになっていた「ケールの葉のドライ」が商品になっていた。イギリスに住む知人が170度のオーブンで焦げないように10分から15分焼くと、まるで青のりみたいになると興奮冷めやらず教えてくれたものだ。誰が考えついたのか!本当に葉っぱなのに青のりのような風味がする。

味噌のフレーク。フリーズドライのパウダーではないそうで、パリパリとした食感がおもしろい。パンにオリーブオイルと一緒にかけると、これがまたどういうわけかチーズ風味なのだ…

小箱にチョコレートのように並んでいるのはディーツだ。ディーツは中東が産地のフルーツで、干し柿のようなマッタリした甘味。私はあんこを作るときの甘みに使っている。ディーツは木に実ったまま完熟までおき、下にネットを敷いて木をゆすって収穫する。その際、グレード別に選別するそうで、一番ハイグレードなのは、黒っぽいもの。外の皮一枚で形をとどめ、中はとろりとジャムのようだった。

ヴィーガンの冷蔵食品を扱う店も年々大きくなっている。いろいろな商品が増えていた。味を試せないのが残念ではあるがこれだけあれば、かなり変化に富んだ食卓が手軽にできそうだ。大豆を使ったマヨネーズや米のミルクは乳製品を食べない人たちの定番食品といってもいい。いろいろな種類がある。

次はBIO会場ではなくニュールンブルグのbeasicという自然食品店で見つけたもの。

この菓子はヨーロッパオーガニック認証であり、ナチュラルであり、グルテンフリーであり、ヴィーガンだという今や最先端のスナック。ドライフルーツをベースにして、ナッツやシードやそば粉やオイルなどを混ぜ込んで、焼くか乾かすかして砕いたものだ。欠けがあったら不良品という商品の常識を打ち破り、大小様々な形が入っている。パリパリッとしていながらムニャッとして、お砂糖が使われていない自然の甘さがなんともあとをひく。

薄い1枚のウエハースの表面に砂糖とシナモンがこれまた薄く塗っていある。一口食べたとき懐かし味だとおもったら…そう京都の八つ橋!まさかそこからヒントを得たとか疑いたくなる風味だった。

展示会が終わり空港までタクシーに乗った。車はガソリンではなく水素ガスで走行するエコカーだった。それでも400キロ走行できるそうでドライバーの意思で3年前から切り替えたそうだ。

窓の外には、軒並みソーラパネルを設置した民家やマンション、農場、教会が続いていたが、これにも驚きのシステムがあった。銀行が家の持ち主から屋根を借りるという形で、無料でソーラパネルをつけ、井戸を掘って熱交換器を設置している。ドライバーの家も銀行に屋根を貸し、4人が暮らす家の1ヶ月の光熱費が50ユーロ(6000円)ほどだそうだ。

ドイツでは食の安全を意味するオーガニックから、生き方や暮らしかたを問うところまでオーガニックが浸透してきているように思えた。

今回は旅行中にてレシピはお休みです。

木幡恵プロフィール

20代でマクロビオティックに出合い、30代で雑穀に出合い、50代でタイに出会ってしまった料理クリエイター。ストイックだけど大胆、本気だけど本音であることがたいせつだと思っている。料理活動の場はバンコク。ベジを基本にアジアの調理法を盛り込んだ料理クラス「gaiatable」を主宰。

タイ語のマガジンHEALTH &CUISINEと日本語のタイ情報誌のDACOにレシピを連載中。
自身が企画した商品をヤムヤムから販売している。

■つぶつぶクッキング
■無発酵の雑穀パン
■雑穀つぶつぶクッキング
■おいしいマクロビィオテック (タイ語)
■タイの料理雑誌HEALTH&CUISINE(タイ語)
■タイのマガジンDACO 料理エッセイ「大地のめぐみ」(日本語)

★Gaia Table 南国食日記
http://gaiatable.com/diary/

★ヤムヤムホームページ
http://www.gaiatable.com/