イギリス メドウズから今年もハーブポマンダーが届きました。ポマンダーは、主にオレンジなどの柑橘系の果物にクローブなどのハーブを刺して作るにおい玉のようなものです。

このポマンダーの登場には、中世ヨーロッパに大流行したペストが大きく関係しています。
ペストが大流行した原因のひとつには、当時のヨーロッパの衛生環境の悪さがあげられます。一般の家庭には、トイレがなく、「おまる」を使用していて、その「おまる」がいっぱいになると指定された場所に捨てにいったそうですが、ほとんどの家庭は、指定された場所ではなく、窓から外へ排泄物を投げ捨てるのが習慣化していました。

ごみと汚物で埋め尽くされる道路・・・雨の日などは不潔なぬかるみとなり悲惨の極みでした。このような環境下で、ペスト菌を持ったネズミが大繁殖を起こし、14世紀にペストで亡くなった人は2500万人以上と言われています。

ペスト大流行の原因には、この衛生環境のみならず、当時の感染予防手段が確立されていなかったことも問題でした。人々は、ペスト対策として、スパイスやハーブを焚いて町を消毒し、ハーブで香水を作って身体を消毒しました。外出の時には、ポマンダーをよく持ち歩きました。このように、病気から身を守るには空気を清浄することを考え、疫病予防や魔除けのためにポマンダーを身に着けたことがはじまりと言われています。

本来のポマンダーは、ハーブやスパイスよりももっと強い香料や、ムスク(ジャコウジカから採れる香料)・龍涎香(アンバーグリスとも呼ばれる。クジラの腸内にできる結石)などの動物性香料が多く用いられ、これらを練り合わせたものを金や象牙の入れ物に入れて使っていました。ポマンダーの名前は、POMME(りんご)とAMBRE(龍涎香の香り又は琥珀色)からきています。

その後、時代の流れと共にポマンダーの形態も変化し、フルーツとスパイスやハーブを使ったポマンダーは冬の風物詩となっていきました。

柑橘系の果物を使ったポマンダーの一般的な作り方は、オレンジなどの柑橘系の果物にクローブなどのスパイスを刺して乾燥させ仕上げていきます。クローブが果実の水分を吸い上げ腐らすことなくベースのオレンジなどを乾燥させます。その様子からオレンジのミイラとも知られていますね。

ここでよく登場するクローブは、ペッパー・ナツメグと共に大航海時代の3大香料でした。
強い抗菌力を持つクローブは、ペストそしてコレラなどの伝染病が蔓延していた中世ヨーロッパで、伝染病の予防に使われクローブの価値が一気に上がりました。

ヨーロッパでは、クリスマス近くになるとポマンダーを作り、クリスマスや新年の幸せを呼ぶプレゼントとして用いています。

そのポマンダーが今年もイギリスから届いた訳です。

これは、メドウズのスタッフが手作りしたものでオレンジスパイスの香りが使用されています。スパイスは体を温めてくれる効果もあるので、オレンジとスパイスは寒さが厳しいヨーロッパには欠かせない香りの一つです。

メドウズのポマンダーはロンドンの中心部にある1875年創業の百貨店リバティーのクリスマスコーナーでも販売されていますが、残念ながら日本では未発売。

ポマンダーは、この柑橘系の果物とスパイスを使ったものだけでなく、いまでは、小さな缶の中に素焼きの石が入ったいわゆるディフューザーなどで楽しむ人の方が多いでしょう。

この時期メドウズがお勧めする香りはシナジーブレンド オレンジスパイス。オレンジ、マンダリンレッド、クローブ、ローレル、シナモンがブレンドされたオレンジスパイスはまさに中世ヨーロッパのポマンダーをモデルにしたブレンドともいえるでしょう。シトラスの爽やかな香りにスウィートなスパイスの香りがアクセントになった、オレンジスパイスは身も心もあったか幸せにしてくれる香りです。

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この記事を書いた人

Naomi Miki アロマプランナー
アロマ商材輸入卸会社に10余年従事した後、自然化粧品メーカー・医療従事者向けセラピスト国際ライセンススクール等に携わり、物流・商品管理・PR・営業・商品開発・WEB管理・新規店舗立ち上げ・企画と多岐にわたる部門を経験。現在はフリーランスで活動している。長年アロマセラピーの現場で培ってきたノウハウと精油や自然化粧品を製造し取り扱う業者としての視点から、精油の品質やアロマセラピーの基本、自然原料やオーガニックコスメについてなど、自身のライフスタイルを交えて伝える講習活動や、企業PRや商品企画など幅広く対応している。