地球温暖化をはじめとする環境問題への関心が高まっています。

プラスチックごみが海洋汚染の原因となり海の生態系に悪影響を与えているニュースや、中国などアジア諸国のプラスチック廃棄物輸入規制、行き場を失ったプラスチックごみ問題など、ここ最近、プラごみ関連の話題がメディアで報じられることが増えました。近年になって、日本でもようやく緊急課題として、認識されるようになってきたようです。

すでにレジ袋の有料化やストローの提供廃止など、プラスチック使用量の削減に取り組む動きがでてきていますが、欧米に比べまだ取り組む小売店が少ないのが、梱包の無駄を省くことができる、量り売りです。

そんな中、ビオセボンは、日本1号店となる麻布十番店オープンから現在まで、すべての店舗でバルクコーナー(量り売りコーナー)を展開しています。利用者も着実に増えています。購買意欲を高めるような演出も印象的なバルクコーナーは、今やビオセボンを象徴する売り場となっています。日本では商品管理が難しく、なかなか売り上げに結び付きにくいと言われてきた、セルフの量り売り。同社の成功事例から「売れているヒミツ」をひもときます。

バルク用オーガニックナッツやドライフルーツを提供する、アルファフードスタッフ株式会社営業本部長の浅井氏と、ビオセボン・ジャポン株式会社広報の四十八願氏にお話を伺いました。

何故、日本では難しいと言われてきた量り売りを導入したのか?

ビオセボン・ジャポン立ち上げメンバーは、何度もフランスへ赴き、ビオセボン本社とディスカッションを重ねてきました。フランスではオーガニックスーパーが日本のコンビニのように街のあちこちにあり、身近な存在です。また、身の回りで起きている環境問題に関心の高い消費者が多く、自分が欲しい分だけ購入でき良いものが安く買えることになり、プラスチック包装など無駄を削減できる量り売りは、しっかりと生活に根付いています。フランス、ビオセボンの理念を売場に具現化したい。日本に新たなライフスタイルを提案する量り売りは、マストである、そう考えました。(四十八願氏)

ラインナップと容量のこと

2016年4月の2回目のフランス視察の後、ビオセボンさんからバルク商材の問い合わせがありました。一般的な業務用バルクは10kg〜20kgのサイズですが、当社では、パン屋さんやお菓子屋さん向け原料として、使いやすい容量の「ミニバルク」2kg入りを販売しています。当時はまだ15品くらいしかラインナップがありませんでした。ビオセボンさんからは70~80程度必要だという話があり、ラインナップの拡充をはかることとなりました。

このサイズが、量り売りのコーナーを展開するうえで重要なポイント。10kg〜20kgでは一度に使いきれず、品質保持のための管理も難しくなります。500g程度では袋代や工賃がそのぶんかかり、ごみも増えます。また2Kgであれば、バルク什器への詰め替え作業などもしやすいのです。(浅井氏)

定期的に店頭で接客も行う。(アルファフードスタッフ株式会社 浅井氏)

売り場はメーカーや商品と消費者をつなぐ場

アルファフードスタッフ株式会社は、オーガニックナッツやドライフルーツを提供するメーカー(輸入者)ですが、定期的に売り場に立ち、商品についての説明や、美味しい食べ方、選び方、量り売りの仕方の説明など、直接消費者の方と積極的にお話するようにしています。

こういった地道な活動もまた、量り売りコーナーが気になっていたものの、まだ利用したことがないといった、潜在顧客の掘り起こしとなり、商品購入やサービスの利用へと着実につながっています。

また、これらのオーガニックナッツやドライフルーツは、基本的に問屋を通すことなく、現地へ直接赴き農家さんから直接買い付けしています。だからこそ知り得る、生産者のストーリーや、接客するうえで必要な商品知識など、普段売り場に立つスタッフに伝えています。そのため、ビオセボンのスタッフは商品知識が豊富な方も多く、逆に勉強になることもあるそうです。

量り売りを導入するうえで留意すべきこと

一番はやはり鮮度管理。ドライフルーツやナッツは湿気や温度の変化に弱いのです。ですから、輸入時に密閉された状態の原料がコンテナで届いてから港の定温管理倉庫へ、そして工場へ輸送するまで、できる限り温度変化がないように細心の注意を払っています。(浅井氏)

ビオセボンでは、できる限り温度や湿度をコントロールできる場所をバルクコーナーにしています。空調管理や乾燥材による品質保持はもちろん、什器も定期的に洗浄して、衛生的な状態を保つようにします。

残りが少なくなったら古いものは小分けにしてしまい、什器の中は新しいロットのものだけにするなど、違う期限のものが混在しないようにしています。(四十八願氏)

納品されるバルクの袋にはもちろん賞味期限が記載されていますが、今什器に入っているものの期限はいつなのかをわかるようにしておくこと。お店によって店頭から下げる期日、ルールを決めて徹底するようお願いしています。(浅井氏)

表示ルール、法律を守る

日本の法律では、有機JAS認証の製品でなければ、「有機」「オーガニック」とうたうことができません。そして、認定を受けた小分け業者でなければ、小分け後の有機JASマークの再貼付はできません。有機JAS小分け認証を取得していない場合は、店舗で小分けにした製品のラベルシールやプライスカードに、「オーガニック○○」などと記載してはいけないことになります。

バルクの什器には、納品されたミニバルクに貼られている有機JASマークを切り取って、該当の素材が入っている什器につけたうえで、商品名に「オーガニック○○」と記載しています。表現方法や伝え方についても注意が必要です。販売する店舗がこのような法律を理解していないと大問題になることも。誤った表現を用いて法律に抵触しないように、各種法律への理解を深める必要があります。オーガニックを扱う事業者として、消費者への適正な情報提供が求められています。

この記事を書いた人

オーガニックプレス編集長 さとうあき

インターネットが急速に世に広まりつつあった2002年、長年身を置いてきたオーガニック業界からEC業界へと転身。リアル店舗時代からIT化時代の変遷、発展への過程を経験し、独自の現場的視点をもつ。2010年、業界先駆けとなる“オーガニック情報サイト”誕生を実現した。「オーガニックプレス」はその確かな目で選択された情報を集約し蓄積。信頼性の高いコンテンツを提供し続けている。