アロマテラピーを最も手軽にそして安心して体感する方法は、フローラルウォーターではないでしょうか。エッセンシャルオイルを、水蒸気蒸留で抽出する際に得られるフローラルウォーター。その呼び名から、花から得られるお水のイメージですが、原料は、花だけでなく、エッセンシャルオイル同様に、葉、樹脂、根、果実、種子などからもできるので、正確にはフローラルウォーターという呼び名は相応しくないのかもしれません。

実際、フローラルウォーターの他にも、芳香蒸留水・ハーブウォーター・ハイドロゾルなどの名前で呼ばれています。

私は、フローラルウォーター=花水といういかにも優美なイメージが好きなので、フローラルウォーターと呼ぶことが多いのですが、人によって呼び方が異なります。

植物の蒸留の過程で得られたフローラルウォーター。エッセンシャルオイルを作る際の副産物と言われます。植物の芳香成分には、水になじみにくい油溶性の成分と水になじみやすい水溶性の成分があります。芳香成分が蒸留によって、飽和濃度を超え、水面上に浮かび上がった油様の液体がエッセンシャルオイルで、下に溜まった水様の液体がフローラルウォーター。エッセンシャルオイルは水に溶けにくいとされますが、フローラルウォーターには、微量ながら水になじみやすい油溶性のエッセンシャルオイルも含まれています。

エッセンシャルオイルとフローラルウォーター・・・その双方が心身に様々な作用をもたらすのも、植物が持ついくつもの芳香成分のなせる業です。

多くの植物が数十から数百にも及ぶ薬理効果を持つ芳香成分を持っていて、絶妙な芳香バランスを保っています。その芳香バランスは自然界が織りなす植物の力であり、人工的に作り出すことは不可能と言われています。この多種多様な芳香成分が心身に様々な影響を与え、今日までアロマテラピーが支持されてきました。

しかし、アロマテラピーの主役エッセンシャルオイルの芳香成分は、植物に含まれている時よりも、数十倍にも濃縮されているため、原液での塗布や飲用、乳幼児への使用など禁忌事項をきちんと把握をして使用しなければいけません。その点、フローラルウォーターは気軽にそして年齢を問わず比較的安全に使うことができるアロマテラピーです。

しかし、このフローラルウォーター・・・作用も穏やかな分、安定性に欠けることが難点。
その安定性を補うため、市販のフローラルウォーターには、アルコールや防腐剤などが添加されていることが多いのです。これはちょっと残念なことですが、化粧品会社の視点からすると、早い段階での腐敗の危険性のあるものの流通は危険です。

私が以前在職していた会社でも、フランスのメーカーのフローラルウォーターを取り扱っていましたが、途中から防腐剤が添加されるようになり、お客様から苦情のお問合せをたくさんいただいたものです。しかし、よく探してみると防腐剤フリー・アルコールフリーのフローラルウォーターは存在します。

例えば、メドウズのローズウォーター。

このローズウォーターは、日本発売から6年を経ますが、私がメドウズに携わって以来お客様からの評価も高く、在庫管理でなされる経時変化の結果も良好です。(香りの変化はその年の植物の状態によって若干の変動はあります。)もちろん、アルコールも防腐剤も使用をしていません。

本国イギリスには、ローズウォーターの他にも、ラベンダーウォーター・カモミールウォーター・ネロリウォーターなどのフローラルウォーターがありますが、ローズウォーター以外は、日本の高温多湿といった夏場の過酷な環境に耐えることができず、敢え無く日本での発売を断念せざるを得ませんでした。

何故、メドウズではローズウォーターだけが安定しているのでしょう?

それは、原料である薔薇の成分に秘密があるようです。

メドウズのローズウォーターは、ブルガリアの有名なバラの谷にあるカザンラクの蒸留所から調達しているもの。

その蒸留所は、1977年から薔薇の蒸留を始め、現在に至るまで植物の有機栽培と蒸留を続けています。160ヘクタールもの自社農場を持ち、有機農法でローズやラベンダーを栽培。
ブルガリアでは、ブルガリアローズオットーとブルガリアローズウォーターと称されるものに厳格な品質基準が設けられていますが、この基準をクリアした上質なローズウォーターがメドウズに届けられるのです。

前述のローズオットーとは、薔薇の女王と言われるダマスクローズの花びらを水蒸気蒸留を経て得られたエッセンシャルオイルの事を言いますが、本来は、ブルガリア産のダマスクローズを水蒸気蒸留したものだけがローズオットーを呼ばれていたそうです。このローズオットー蒸留の副産物であるローズウォーターは、本物のローズを彷彿させる、薔薇の女王と呼ばれるにふさわしい心躍る繊細且つ優雅な香りです。

ブルガリアのローズオットーやローズウォーターなどローズ関連商品の品質基準を管理しているブルガリア国立バラ研究所。認定しているブルガリアローズウォーターの精油成分の含有率は0.05%以上。ローズウォーターの主要な芳香成分は、フェネチルアルコール(通常40%以上)、シトロネロール・ゲラニオール・ネロール。新鮮な薔薇はフェネチルアルコールの含有率が高く、ブルガリアローズウォーターもこのフェネチルアルコールの含有率の高さから、繊細な薔薇の香りに非常に近くなっているとブルガリア国立バラ研究所のHPに記載されています。(ブルガリア国立バラ研究所HP参照 http://bulgaria-roselaboratory.jp/)

薔薇が醸し出す香りの特徴的な成分がこのフェネチルアルコールなのですね。意外にも、このフェネチルアルコールという芳香成分は水に溶けやすいので、ローズオットーはフェネチルアルコールの含有率が低く、ローズウォーターの方が高いというから驚きです。(溶媒を使用して抽出するローズアブソリュートは、フェネチルアルコールの含有量が高めです。)

又、フェネチルアルコールは静菌作用が高いことから、ローズウォーターの安定性があります。(化粧品にも防腐剤としてフェネチルアルコールを添加しているものがあります。)このフェネチルアルコール・シトロネロール・ゲラニオール・ネロールをはじめとしたローズウォーターの芳香成分が、優雅な香りと共に、肌に柔軟さと滑らかさ、保湿を与え、生き生きとした肌へと導き、防腐効果も兼ねてくれているのです。一般の化粧品ならば、保湿剤・香料・乳化剤・防腐剤などその目的に則した原料をブレンドしていかなければいけませんね。これが、植物の凄いところです。

季節はもうすぐ、薔薇の季節へと入ります。メドウズにも、今年蒸留される新鮮なローズウォーターが初夏に登場します。

優雅な薔薇の香りに包まれたスキンケアタイムを満喫してみませんか?

この記事を書いた人

Naomi Miki アロマプランナー
アロマ商材輸入卸会社に10余年従事した後、自然化粧品メーカー・医療従事者向けセラピスト国際ライセンススクール等に携わり、物流・商品管理・PR・営業・商品開発・WEB管理・新規店舗立ち上げ・企画と多岐にわたる部門を経験。現在はフリーランスで活動している。長年アロマセラピーの現場で培ってきたノウハウと精油や自然化粧品を製造し取り扱う業者としての視点から、精油の品質やアロマセラピーの基本、自然原料やオーガニックコスメについてなど、自身のライフスタイルを交えて伝える講習活動や、企業PRや商品企画など幅広く対応している。