日本より一足早く冷たい風が吹き始めたドイツ。秋の訪れとともに各地の農場では収穫を祝う祭りやイベントが開かれています。

そんな中、訪れたのはドイツ西部・ドルトムント市にあるオーガニック農場「Schultenhof」の農場祭。日本人サッカー選手が活躍していたことでも名が知られている街は人口約60万人を超える産業都市。その中心部から車で10分ほど走らせた閑静な住宅街にその農場はあります。

ドルトムント駅前にそびえ立つ高層ビルを望める距離にありながら、都会の喧騒が全く感じられず、広大な農地が広がっています。

ここはオーガニック生産団体「Bioland」の認定農場で、穀物や露地野菜の栽培に加え、豚、鶏、牛の飼育を行っています。

敷地内には直営ショップもあり、農場で生産された新鮮な野菜や卵、ハムなどの肉加工品や乳製品を購入することができます。加えてグローサリーなどの仕入れ商品も豊富で、品ぞろえや商品数は一般的なビオショップと変わりません。

当日は天気に恵まれたこともあり訪問客で大賑わい。自家製の茹でジャガイモやソーセージを提供するテントや、野菜の販売ブースには人だかりができていました。

敷地内は自由に見て回れるようになっており、豚小屋で豚に触ったり、トラクターの試乗体験をしたりとアクティビティも充実。

子ども達は干し草の山に登ったり、木登りをしたりと農場ならではの遊びを満喫しているようでした。

今回の農場祭、実はドルトムント市が属するノルトライン・ヴェストファーレン州全体の「オーガニック農業アクションデイ(Aktionstage Ökolandbau NRW)」の一環でもあります。

このアクションデイは8月31日から9月15日まで約半月にわたるキャンペーンで、州内のオーガニック農場やパン屋、ビオショップ、レストランなど100以上の企業や団体が参加。今回のような農場祭から農業体験、工房見学、収穫体験、クッキングショー、試食会など200ものイベントが開催されるという大規模なものです。

同州の環境・農業・自然保護・消費者保護省が支援しており、州内の人々にオーガニック農業についてより良く知ってもらい、地域のオーガニック生産物の販売促進につなげることを目的としています。

上の画像は同州ヴァーレンドルフ市内の農場で行われたオーガニック農業アクションデイ開幕式の様子。ヴァーレンドルフ市長(写真中央)や同省事務次官(写真右から2人目)も出席しており、行政と自治体が一丸となってのイベントであることがわかります。(写真:TK-SCRIPT)

企業や団体はアクションデイに参加することでイベント内容や広報活動についてアドバイスや助言を受けることができます。またプログラムをまとめたフライヤーは州内のビオスーパーを始めとする各所で配布され、集客力に貢献しています。

アクションデイのプログラムフライヤー

▽画像
https://www.oekolandbau-nrw.de/download/ATOEL_2019_Prog_Druck_A4-k.pdf

農場祭でテントの行列に並んでいた際、すぐ前に並んでいた女性がそこで買ったジュースを飲みながら「これもオーガニックなの?美味しいわね」と話していました。普段はあまりなじみがなくても、イベントがあれば足を運んでみようと考えるもの。現地で見て体験してオーガニックの良さを知ってもらうことで、新しいファンは増えていきます。

消費者が製品に透明性や信頼性を求める傾向は年々強くなっており、オーガニック農業にとっては追い風です。もちろん日本でも消費者にオーガニック農業について知ってもらうイベントは各地で開催されているでしょうが、そこに行政の支援があればさらに心強いことは言うまでもありません。開かれたオーガニック農業を目指して、このような取り組みが日本でも増えてほしいものです。

この記事を書いた人

神木桃子(こうぎももこ)

オーガニックとローカルをテーマに食の魅力を探求し続けるレポーター。オーガニック専門店を運営する会社にて販売・バイヤー職に、地域産品のコンサルや販売を行う会社にて営業・バイヤー職に従事し、商品企画から流通、販売まで幅広い経験を積む。2014年秋からドイツ在住。