今回はドイツを飛び出して、お隣の国・デンマークのオーガニック事情についてご紹介したいと思います。

北欧デザインやヒュッゲなど何かと注目の的ですが、世界有数のオーガニック先進国であることはご存じでしょうか? 調べたところ、2015年の国民一人当たりのオーガニック食品購入額は200ユーロ以上(アメリカやドイツの場合は100ユーロ強。)。小売市場におけるオーガニック食品のマーケットシェアは9.7%と世界でもトップクラスです。

先日、旅行で訪れた首都・コペンハーゲンでは、日本やドイツとも違った形でオーガニックが根付いている姿を見ることができました。

まず初めはコペンハーゲンの台所と呼ばれる屋内型マーケット「Torvehallerne KBH」から。観光客や地元民で賑わう人気スポットにある精肉店では、店頭に王冠のイラストが入った赤いマークが掲げられています。

商品ごとのPOPにも同様のマークが入っています。

これこそデンマーク国家認証のオーガニックマーク、通称「Øマーク」と呼ばれているものです。デンマーク語のオーガニックを意味する“økologi”の頭文字“Ø”をモチーフに、ナショナルカラーの赤とデンマーク王室を象徴する王冠のイラストをあしらったデザインになっています。今年で28年目を迎えるこのマークはデンマークのほぼすべての消費者から認識されているというから驚きです。

このマークがユニークな点、それはデザインアイコンとして様々な場所で用いられていることです。

日本でも北欧ファンの間でオリジナルグッズが人気の老舗スーパー「Irma(イヤマ)」が今年1月にオープンさせたオーガニック専門店では、入口で大きな「Øマーク」が出迎えてくれます。

店内に貼ってあったオーガニックコーヒーを紹介するポスターでは、“Ø”の文字にそのままマークを当てこんでいます。視線がマークに集中し、オーガニックであることがより強くメッセージとして伝わってきます。

極めつけはレストランで見つけた「Øマーク」。マークを皿に見立て、両脇にナイフとフォークをあしらったデザインになっています。まるでピクトグラムのように食事を連想させ、オーガニックレストランだとすぐにわかります。

これも列記とした認定マークで、レストランがオーガニック食材をどれくらい使用しているか、その割合によってブロンズ(30~60%)、シルバー(60~90%)、ゴールド(90~100%)に色分けされているそうです。

一般的にオーガニックマークは商品情報としてパッケージに印字される用途が主かと思います。しかしデンマークではそれ以上に、オーガニックをアピールするアイコンとして使われ、暮らしの中に入り込んでいる印象を受けました。まさにデザインの妙、マークの認知度が高いのもうなずけます。

オーガニックをより身近に感じてもらい、当たり前のように生活の中に取り入れてもらうためにも、まずは知ってもらうこと。多くを語るよりもデンマークの事例のように、デザインの力を借りるのもひとつの方法かもしれません。

[出典・参考]
・デンマーク大使館ホームページ
(http://japan.um.dk/ja/guruden-en/organic-denmark/)
・BÖLW (2018)「Zahlen, Daten, Fakten: Die Bio-Branche 2018」
(https://www.boelw.de/themen/zahlendatenfakten/bio-branche-2018/

この記事を書いた人

神木桃子(こうぎももこ)

オーガニックとローカルをテーマに食の魅力を探求し続けるレポーター。オーガニック専門店を運営する会社にて販売・バイヤー職に、地域産品のコンサルや販売を行う会社にて営業・バイヤー職に従事し、商品企画から流通、販売まで幅広い経験を積む。2014年秋からドイツ在住。